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30 1月, 2010

街ぶらり旅 Vol.3 ニューヨーク

街ぶらり旅の三回目は、ロングアイランドにあるイサムノグチ美術館です。地下鉄の駅からもやや離れているのですが、とても気持ちのよい空間です。


建物の外観。ブロック積みの建築です。見えている箇所はリニューアルされた部分です。二年半に渡り改築が行われ、2004年に再オープンしました。カフェテリアが新設され、身障者の方でも鑑賞しやすくなりました。教育センターも新設部分に含まれています。


エントランスを入ってすぐの空間は、内とも外ともつかない場所でした。その中に、イサムノグチ(1904-1988)の彫刻が配置されています。




冬の寒さと夏の暑さに、どのように鑑賞してもらうのかが、設計のひとつのポイントだったようです。




レンガ造りの建物は、既存の工場をベースに13のギャラリーを整備し、1985年にオープンしました。イサム・ノグチとショージ・サダオFuller & Sadao Architects)によって建築計画が行われました。その後も数回に渡り、建物に手が入れられているそうです。

古い建物と、新しくリニューアルされた建物を繋ぐようにして、庭があります。イサム・ノグチの石の彫刻が、庭を通り過ぎてゆく人を静観しています。平日の朝一番でしたが、天気に誘われてか、複数のカップルや家族の姿が見受けられました。


こちらは、古い方の建物に設置された彫刻。そのままレンガ現しの白塗装となっています。素朴な素材と空間のなかで、ノグチの彫刻が映えます。




外を出ずに、旧館と新館をぐるりと回遊できるようになっています。こちらは、新しい展示室です。リノベーションはニューヨークアーキテクツのメンバーでもある、Sage and Coombe Architectsが担当しました。美術館によると、ショージ・サダオ(Todd Williams-Billie Tsien Architects)も継続的に計画に関わったようです。

日本人の居住者や観光客の姿もありました。ノグチのおかれた立場がまさに、アメリカ人と日本人の間でしたから、美術館が両者を繋ぐコミュニティースペースのような役割を担うようになっても、不思議ではありません。

増改築を重ねた建物が、多岐にわたる作品群をおおらかに覆っていました。マンハッタンからは少し離れていますが、ぜひ足を運んでいただきたい場所です。


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29 1月, 2010

「BMW Studio ONE」神宮前にオープン

神宮前に1月30日から2月28日まで期間限定でオープンする「BMW Studio ONE (ステュディオ・ワン)」のオープニングに行ってきました。

テントでできた大温室の中で、サステイナビリティーをテーマにした様々なイベント(トークショー、カフェ、マルシェ等)が4週間にわたって行われます。

テントの内部。全てリサイクル可能なもの使用しており、温室の電力もグリーン電力でまかなっているそうです。デザインはJTQ。広さは約200m2で、どこにいても緑を感じます。

「サステイナブル・ライフ・ラゲッジ」。8人のクリエイターが考えるサステイナブルなアイテムを具現化したものが展示されています。

こちらは坂茂さんのサステイナブル・ライフ・ラゲッジ。「サステイナブルという言葉はファッションになっているので正確には意味はわかりませんが、ボランティア活動を通じて建築家が力を発揮できることがあると学生に教えています。その活動がサステイナブルであるなんて考えたことありません。自分なりに重要だと思うことを次世代に伝えること。それが私の責任だと思ってやっています」

BMW535iグランツーリスモ。「より少ないエネルギーでより高い性能を発揮する」さまざまな環境技術が盛り込まれているそうです。

BMWジャパン社長のローランド・クルーガー氏。「BMWグループはCO2削減に積極的に取り組んでいるということを、この場所を通して発信していきたい。これから4週間、多くの方と議論を交わしていくのを楽しみにしています。」

トークショーメンバーのご紹介では、「クリエイターと呼ばれたのは初めてです」と元宇宙飛行士でジャーナリストの秋山豊寛さん。

温室なので、レモンもあります。

BMWオリジナルの「BE@RBRICK 400%」(体長280ミリ、廃プラスチック製)が展示されています。

こちらは販売用の「BE@RBRICK 100%」。同様に廃プラスチック製で、販売収益の一部はNGO団体「グローバル・ヴィレッジ」へ寄付されるそうです。

BMW Studio ONE
日時:2010年1月30日(土)~2月28日(日)まで 11:00~23:00
場所:東京都渋谷区神宮前4-9-6

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24 1月, 2010

谷尻誠さんの「小平の家」

Suppose Design Officeを率いる谷尻誠さんの住宅「小平の家」のオープンハウスに行ってきました。東京小平市の一橋学園駅より10分ほどの住宅街。周囲の住宅とは明らかに異なる外観が遠くからも目に入りました。

家を半分ほども覆うタープが特徴的。「キャンプでタープやテントを張ると外なのに中、中なのに外のようなとても開放的な空間ができる。そんな屋内と屋外の境目がないような家がコンセプトです。」と谷尻さん。

北東側からはほとんどタープに覆われているように見えます。

東側から。

訪れる人たちが玄関からだけでなくごく自然にタープの中へ入り込み、中と外が容易に繋がる風景が生まれます。

玄関を入ると1Fフロアは全てコンクリートで、シンプルな階段が設置されています。壁は合板に素材感のある白ペイント。

入って右にはバスルーム。

左はダイニングとキッチン。その奥がリビングになります。

リビングは50〜60cmほど掘り下げられています。これは地盤の弱さに対応したため。しかし目線が下がり地面が近づくことで、さらに外と中の境目を曖昧にする効果が生まれています。

リビングから外を見ると正にタープの中にいるようです。木造ですがこの開口部の柱2本には無垢のスチールを使い、細く目立たなくしてあります。むき出しの土は今後芝生や植栽で仕上げるそうです。

来客がある度に外と中がつながります。

トップライト。

2Fへ上がります。

1F同様一つの空間になっており、2箇所の吹き抜けにより3つのエリアに分けられ、寝室や子供部屋が仕切られているようで仕切られていない感じを演出。床は檜。

2Fの奥から。

2Fの窓は1Fとは異なりとても小さく、採光はほとんどトップライトがまかないます。

吹き抜けからリビングを見下ろす。

2Fの窓から見たタープの内側。

天窓は南北で角度を変えて開いています。(特別に屋上に上がらせていただきました)

タープの接続部。

建物は上から見ると少し角度の付いた平行四辺形になっています。施主からの「バルコニーと自転車置き場は目立たなくしたい。自転車置き場に屋根が欲しい。」とのリクエストから生まれたアイデアだそうです。

構造を担当したオーノJAPAN大野博史さん。「この住宅には壁や柱が少ないのでタープを支えるための構造に工夫が必要でした。」「今回のタープは便宜上"タープ"と呼んでいるだけです。そういった、業界的にもまだ名付けられていないような今までにない役に立つ建築の部位を提案したいよね、といつも谷尻さんと話しています。」

タープの強力なテンションを支持するため、外構に沿って「T」字を逆さにしたような形のコンクリートのアンカーが埋め込まれています。

谷尻誠さんお気に入りの場所で。「外は大抵外構ばかりであまり設計されないですが、そこをきちんとやってみたかった。生活が屋内だけでなく屋外も積極的に使われる状況ができればいいなと思って設計しました。」

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15 1月, 2010

「エレメント」構造デザイナー セシル・バルモンドの世界

東京オペラシティアートギャラリーにて1月16日より開催されるセシル・バルモンドの個展内覧会に行ってきました。バルモンドさんは、エンジニアリングの枠を越えて、伊東豊雄、レム・コールハース、アルヴァロ・シザをはじめとする多くの建築家と協働してプロジェクトを手掛けている構造デザイナーです。


多くの関係者やプレスが集まりバルモンドさんの挨拶が始まりました。

「今回の展示のエレメントは二つあり、一つは自然の中に見られるエレメント、もう一つは私自身のエレメントです。展示のテーマは自然の中にある隠れた秩序です。自然はもともと素晴らしくデザインされており、優れた仕組みを持っているものは良い形を持っていると考えます。」と話すバルモンドさん。

ギャラリー1。展示はまず"Banners" (バナー) から始まります。高さ5.2m、幅1.2mのバナーが200本吊り下げられ、自然界のイメージや抽象的なスケッチが描かれている迷路のような空間。

中央には円形の広場があり、偶然性、物質性、秩序がいかに共存しそれぞれが相互の内に存在するかをテキストで示しています。

部屋の奥でバナーはアクリルプレートに姿を替え、幾何学模様や数学的な成り立ちを図解しています。
"Reciprocal Grid" (レシプロカル・グリッド)。


ギャラリー2。バルモンドさんのエレメントの世界に入ります。
"H_edge" (ヘッジ)。立体的なヴォイド。

本来自立することなく構造として成り立たないチェーンやアルミプレートが、お互いを支え合うことで強靱な構造物に変化しています。

7,000枚のアルミプレートが延べ2,500mのチェーンを自立させています。多くのボランティアの協力が不可欠だったそうです。

ステンレスのチェーンはこのような治具に固定され強い力で引っ張り、1mmほど伸びたところでアルミプレートをはめ込み、4面の柱ができあがります。これを1ユニットにし組み上げていったそうです。(ギャラリー5にて展示)

"Prime Floor" (プライム・フロア) 。素数のリズムのジグザグはフラクタルの川を表現。

"Prime Wall" (プライム・ウォール)。

"Danzer" (ダンザー)。様々なスケールの四面体が組み合わさってつくられた、フラクタルな川の流れに転がるフラクタルな巨石。

巨石の裏側。
一番奥の壁面にはフラクタルな図形の映像が映し出されています。

バルモンドさん?

コリドールでは、セシル・バルモンド、Arup AGUによるプロジェクトの展示。

"H_edge"の中でポーズを取ってくださったバルモンドさん。「ギャラリー2は通り抜けながら感じて欲しい。まず洞窟、それから川、岩、最後に雨(映像のこと)。自然の中に見られるエレメントを私自身のエレメントで表現しました。」

「エレメント」構造デザイナー セシル・バルモンドの世界
会 期:2010年1月16日[土]〜 3月22日[月・祝]
会 場:東京オペラシティアートギャラリー

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