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26 1月, 2016

佐々木龍一 + 奥村梨枝子による「米洲ギャラリー」

佐々木龍一(佐々木設計事務所)と奥村梨枝子(ATELIER O)が手掛けた「米洲(BEISHU)」の新しいギャラリーを見学してきました。場所は台東区の二長町、御徒町の近く。

 '70年代に建てられた米洲ビルの1階。米洲は無形文化財(人間国宝)である人形師、原米洲によって明治44年に設立された雛人形や五月人形を扱う会社である。


 イーソーコ総合研究所のプロデュースで、元々4階にあったショールームを1階に移転し、新たにエントランス、ショールーム、ギャラリーの3つの複合的な機能を持つ空間としてリノベーションされた。


 近付くとファサードのガラス面にはドットの濃淡で模様が描かれている。
模様は金雲や朽木雲を現代的に再解釈したもので、昼間は柔らかく透過した光が店全体を柔らかく包み込む。

光の加減で浮かび上がる朽木雲。


 ギャラリーは全体で81m2。取材時は原米洲の特別展覧会期間中であったが、今後一般のアーティストや街に開かれた場所として使われていくそうだ。右奥のスペースが15m2ほどの常設ショールームになる。


手前は可動式の什器が置かれる"動”の空間、右奥が壁付什器が連なる"静"の空間。異なる性格を持つ2つの空間が同様のシルエットを持つ展示台でシームレスにつながる。


 ショールームスペース。
スチールの無垢板で組み合わされた展示棚は、たなびく金雲のイメージ。壁は白ではなく、黄色味のあるカラーを使っている。

 展示棚は一架数100kg。中央のものでは790kgあるため、3架共壁面内の鉄骨に支持されている。


 照明は永島和弘(CHIPS)が手掛けた。壁や天井からの拡散光で、可愛らしい表情の人形をやわらかく包み込み、全体として幻想的な広がりを演出している。



 ショールームを歩きながら、雛人形を様々な角度から眺めることができる。


 浮遊するような人形たち。



 右から佐々木龍一、奥村梨枝子、照明デザイナーの永島和弘の各氏。
「歴史ある米洲のお人形のための空間をつくるにあたり、あらためて日本文化を勉強しました。屏風絵や絵巻物の金雲の向こうに垣間見える物語に入り込むような感覚をぜひ体感しに来てください。」と佐々木さん

洲:www.beishu.com

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16 1月, 2016

「フォスター+パートナーズ展 都市と建築のイノベーション」レポート

六本木ヒルズの森美術館・東京シティビュー内スカイギャラリーで開催されている「フォスター+パートナーズ展 都市と建築のイノベーション」プレス内覧会に行って来ました。
Exhibition in Roppongi, Tokyo [Foster + Partners ARCHITECTURE, URBANISM, INNOVATION]

 フォスター+パートナーズは、イギリス人建築家ノーマン・フォスターによって1967年に設立。約1,500人の従業員を抱え、世界45カ国で300のプロジェクトを遂行している世界最大規模の組織設計事務所。
本展は、2009年から北米、南米、アジアなどをまわった巡回展を森美術館独自の視点で再構成したもの。代表するおよそ50のプロジェクトを模型、映像、家具、スケッチなど膨大な資料を通して、その半世紀に及ぶ設計活動を総合的に紹介する日本で初めての大規模展覧会である。

 プレスツアーには、フォスター+アンドパートナーズのパートナー、トニー・三木氏(中)、パートナー兼ヘッドオブコミュニケーションズのケイティ・ハリス氏(右)がアテンドした。
「Bloombergのロンドン本社ビルや、アップル新社屋など、今後完成するプロジェクトは特に見て頂きたいものです。最新情報としてはアフリカ・ルワンダにできるドローン専用空港(陸路では物資を得られない地域にドローンによって届けるためのハブ)が近い将来完成しますので、私たちの人道的な建築プロジェクトとして楽しみにしていてください」

 52階スカイギャラリー。眼下に広がる東京の絶景を背景に展示物が並ぶ。
まずアトリウムには世界的に知られるフォスター+アンドパートナーズを象徴する作品が並ぶ。香港上海銀行本店、ドイツ連邦議会新議事堂 ライヒスターク、大英博物館 グレートコート、ミヨー橋、北京空港。

 代表作品の年表「TIMELINE OF COMPLETED PROJECTS」プロジェクトの種類によって色分けされ、日本には6つのプロジェクトがある。

 プロジェクト数が断トツで多いのはやはりイギリス。


 本展は3つのセクションで構成されている。
■セクション1は「フォスター+パートナーズを支える建築思想」。
工学者・思想家リチャード・バックミンスター・フラーとフォスター氏との12年間に及ぶ交流を軸とし、共同プロジェクトや初期の作品が展示されている。フォスター+パートナーズのオフィスでは、今でもその多大な影響を受けたフラーの思想とスピリットが受け継がれているという。

 〈オートノマス・ハウス〉左、〈ウィリス・フェイバー・デュマス本社〉1975 右。その奥に〈セインズベリー視覚芸術センター〉1978。
フォスター+パートナーズ作品の中で最も人気のある建物。


 〈スタンステッド空港〉1991 手前、〈香港上海銀行〉1986 左奥、
〈ルノー配送センター〉1982 右奥。


 〈ドイツ連邦議会新議事堂、ライヒスターク〉1999。
戦争で失われたドームをガラスで再生した東西ベルリンの統一の象徴。大屋根を付けたコンペ案の模型もある。
かつて戦争でイギリスを攻撃した国の国会議事堂のリニューアルを、イギリスの建築家が担当するというヨーロッパの懐の深さを感じさせる。



 〈大英博物館、グレート・コート〉2000。


 ■セクション2「空間から環境へーフォスター+パートナーズのデザインプロセス」
エコロジー、サステイナブル、歴史、伝統、地域、国家といった各国が抱える課題に、最先端の技術で応えてきたフォスター+パートナーズの膨大なプロジェクトの中から厳選したものを展示。





 「スイス・リ本社ビル(中央)を筆頭に、"どうしてこういう形なの?” という質問を日常的に受けます。形状については10も20も理由があります。私たちが手掛けるプロジェクトには様々なスペシャリストが関わり一緒に仕事をしていますので、そのプロセスにおいて建物が発展し出来たかたちなのです。」とトニー・三木氏。


 夜になると東京の夜景を背景に、高層ビルの模型が立ち並ぶ様子が見られる。


 その国を代表する国際空港を手掛けられる設計事務所は限られてくる。
手前から〈クィーン・アリア国際空港〉2012、〈北京首都国際空港〉2008、〈メキシコシティ空港〉2014-。

 3Dプリンターを使った模型の数々。


 ■セクション3「都市と建築のイノベーション―未来のライフスタイルを発想する」


 〈西九龍文化地区〉2009 コンペ模型。


 〈ブルームバーグ ロンドン〉2015-、〈スラッセン マスタープラン〉2008 右奥、〈バタシー発電所 スカイライン〉2014- 中奥。


「伝統と未来」、「人間と環境」といった普遍的なテーマを追求し、革新的なアイデアで建築や都市をデザインしている。

 フォスター+パートナーズのフィールドは、もはや地球だけではない。ここでは近年彼らが目を向けている月や火星関連の研究が展示されている。手前は3Dプリンターでつくる生命のような構造体をもつ月面住居。

今話題のアップル新社屋〈アップル・キャンパス2〉はこの右壁面に展示されている。
敷地は700,000m2(六本木ヒルズの約6倍!)あり、敷地の70%以上が緑化、オフィスや駐車場ビルなどの屋根全体にソーラーパネルが設置され、「ソーラーパネルが設置された世界最大の事業所」になるという、サステイナブル建築に12,000人従業員が働く計画だ
※アップル関連プロジェクトは撮影禁止のため会場でご覧下さい。

 世界最大規模のフォスター+パートナーズオフィスと仕事風景。


 ノーマン・フォスターと愛用のモールトン社製の自転車。フォスターの趣味は自転車の他にも飛行機操縦、クロスカントリースキー等がある。
下のケースには〈テクノ・ノモス・テーブル〉1986 の各種パーツ

 ノモス・テーブルのパーツはラウンジカフェのディスプレーにも。同時期の香港上海銀行に通ずるデザインだ。


 〈ラウンジコーナー〉
映像、関連書籍あり。フォスター+パートナーズがデザインした家具で寛ぐことができる。毎週金曜日の19時からは映画「フォスター卿の建築術」も上映されている。


【フォスター+パートナーズ展:都市と建築のイノベーション】
会期: 2016年1月1日~2月14日
会場: 六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内スカイギャラリー
   (六本木ヒルズ森タワー52階)
詳細: www.mori.art.museum/contents/foster_partners/index.html



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12 1月, 2016

N.A.S.A設計共同体による千葉県鋸南町の「道の駅 保田小学校」

N.A.S.A設計共同体による千葉県鋸南町(きょなんまち)に竣工した「鋸南町都市交流施設・道の駅 保田小学校」の竣工式に行ってきました。
N.A.S.Aとは古谷誠章/NASCAを代表に、渡辺真理+木下庸子/設計組織ADH、北山恒/architecture WORKSHOP、篠原聡子/空間研究所の4者で構成されたユニット。
2014年度をもって閉校の町立保田(ほた)小学校跡地を活用した、都市交流施設のプロポーザルによって2013年に1位に選定された。
(新建築2016年1月号に掲載)

館山自動車道・鋸南保田インター出口から100メートルもない「保田小学校」。小学校の体育館然とした建物がすぐに見える。既存の小学校として備えている施設・設備・機能を生かしながら、町内・周辺・首都圏の利用者に開放し、交流客も町民も集まれる場所などの条件が求められた。

そのまま残された正門は歩行者のエントランスで、自動車用は別に設けた。

校舎1階には飲食店や物販のテナント、情報ラウンジ、管理事務所、貸しスペースなどが入り、2階には簡易宿泊施設、音楽スタジオが入る。正面2階には共同浴場、右手の体育館は市場になっている。建築家4者はそれぞれいくつかのパートを受け持ち、全体と調整しながら設計を進めた。


地産品市場 〈きょなん楽市〉は元体育館。下部の外壁2面をガラス張り、上部の外壁4面は40mmのポリカーボネートの中空板で仕上げた。(NASCA担当)


西面には竹を植え、夏の西日を遮る。

竹林の中はちょっとした遊歩道に。

当日は地元の人を招いたプレオープンということもあり、市場には既に沢山の商品が並び賑わっている。4面のハイサイドライトの他、トップライトも設けてあるのでとても明るい。

既存の鉄骨は劣化や強度をチェックされ、防錆処理と再塗装されている。強度的には殆ど問題がなく、一部補修や追加された部分に赤く差し色がされている。

かつて児童が使った備品は随所に活用されている。

市場を出ると様々な催しに利用できるイベント広場。正面には元職員室、右にトイレと共同浴場が増築されている。

職員室側の玄関はそのままに。中へ入るとカフェ、奥の授乳室やトイレへ通じる。


元職員室〈cafe 金次郎〉。(空間研究所担当)


既存の職員室の屋根に造ったデッキスペース。強度を考慮し定員280人とキャパを定めてある。浴場〈里の小湯〉は既存建物とは構造を別にしてある。
(空間研究所担当)

浴場は男女それぞれ10人ほどが利用できる広さ。


教室棟2階、南側全面は〈まちの縁側〉と呼ぶサンルームを増築。
教室棟と駐車場の間には 〈里の原っぱ〉 を整備し、芝が根付いた後子どもたちが遊べるようにし、小学校の風景を再現できる。

2階の窓からは黒い板が整然と並ぶのが見えるが後ほど。

〈まちの縁側〉の下はピロティになり、テナントがいくつか連なる。細長い建物の往来がしやすくなるような動線に。

 既存風に作られた手洗い場。


〈まちのコンシェルジュ〉。鋸南町の観光・宿泊・イベント・生活情報の提供の他、宿泊や浴場のフロントとして機能する。
architecture WORKSHOP担当)


テナントではない〈こどもひろば〉は幼児向けのスペース。壁面の立体迷路の裏が管理事務所になっており、丸窓から子どもたちの様子を伺える。architecture WORKSHOP担当)

中華料理〈3年B組〉。(ADH担当)

地元の人気中華料理店が出店。地元感そのままに演出。

物販・お土産〈快 鋸南百貨店〉。跳び箱を再利用したテーブルが見える。(NASCA担当)

元昇降口で、2階までの吹き抜けに、下駄箱、踊り場に設置されていた掲示板がそのまま残る。左の壁には剥がされた体育館の床がパッチワークのように組み上げられている。

イタリア料理〈Da Pe GONZO〉もNASCAが担当だが、ほぼテナント側のデザインと自主施工による。

〈里山食堂〉。地元の女性達が切り盛りし、おふくろの味が楽しめる。architecture WORKSHOP担当)

テーブルは学習机をリユース。

昇降口を利用した吹き抜けスペースに大テーブルも備わる。

2階に上がって〈まちの縁側〉。
縁側の長さは75m。訪れた人が自由に使えるほか、宿泊客の自炊スペースでもある。左側が既存のバルコニーがあった場所で、右に2.4mほどせり出して増築されているが、既存の建物には荷重をかけずに独立している。外から見えた黒い板は、室内側では白くなっていた。architecture WORKSHOP担当)

板は34枚の蓄熱板だった。冬場は黒い面で太陽熱を蓄え、夜間緩やかに放熱する。夏場は白い面を外に向け遮光板になるというわけだ。
この日はかなり冷え込んだが、温室のように暖かで上着を着ているとすぐに汗ばむくらい。

左の柱と一緒に見える銀色のパイプは、上部の暖かい空気を足元に循環させるリターンダクト。
咲き誇るのはブーゲンビリアで、水仙と並んで鋸南町の特産。今はここで育成されているが、春を待って1階の柱脇に植え替えられ、長大なブーゲンビリア棚にするそうだ。

簡易宿泊施設〈学びの宿〉。北側の既存廊下はほぼそのまま。元教室が客室になる。
地元の年配の方々が「自分たちが通ったときの校舎とは立替えられたが、学校が残って本当に良かった。」と口々に話していた。(ADH担当)

廊下の窓からは里山の風景。


客室は教室の面影たっぷり。
畳を敷いたベッドは共通だが、インテリアが各室少しずつ異なり、ここでは体育館にあった巨大な時計が掛かる(動いてはいない)。
客室からは縁側に連続しているので出入り出来る。

教室を半分に分け2室にしているため、後ろ側の部屋ではロッカーがそのままで、理科室にあった標本などが飾られている。

竣工式典と第二の人生を歩み始めた二宮金次郎。

N.A.S.A設計共同体。左から古谷誠章(NASCA)、渡辺真理(設計組織ADH)、篠原聡子(空間研究所)、八木佐千子(NASCA)、北山恒(architecture WORKSHOP)の各氏。

【鋸南町都市交流施設・道の駅 保田小学校】
所在地:千葉県安房郡鋸南町保田724(館山自動車道鋸南保田インター至近)
詳細:http://hotasho.jp/  
  (飲食店は比較的ラストオーダーが早いので要確認です)

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