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21 9月, 2016

河野有悟による大田区の「南雪谷の家」

河野有悟(河野有悟建築計画室)による大田区の「南雪谷の家」を見学してきました。
最寄り駅は東急池上線 雪が谷大塚駅。
(※9月19日発売の新建築 住宅特集2016・10月号 "テラスの極意" に掲載されている作品です)

 敷地面積170m2、建築面積102m2、延床面積229m2。木造3階建て。
大きなボリュームを上下・左右方向に割ったような構成で、1階に親世帯、2~3階を子世帯とする二世帯住宅だ。


左手が南になるが、そのままでは1階に外光を得にくいため、片手を上げるようにハイサイドライトの開口を設け光を導いている。
それに伴い立ち上がった斜めの壁は2階のプライバシー確保に活用されている。

 1階の室内から見るとこのように。住宅密集地ゆえ、南側に迫る隣家に対して積極的に開口せず、ハイサイドライトから間接光を得ているのがよく分かる。
奥と手前に見える梁を利用して、引戸で仕切り個室を作ることができる。

 奥からの見返し。


 奥の個室は庭に面している。見えるのは子世帯側で、庭を介して通じることができる。


 子世帯へ。左の黒いガルバリウム張りは親世帯だが、奥にキッチンの開口があるので、孫たちが「おばあちゃん行ってきまーす」といった具合に声を掛けられる。


 玄関を入ると正面に和室。


 和室は床の間も入れて9畳。久しぶりに広い和室を拝見した。


 雪見障子を上げると縁側と、先に紹介した庭に連続する。


 2階は筆者の背後に映像作家であるご主人のアトリエ、前方にダイニングスペースとその左にキッチン、リビングスペースと続く。


 リビング側から。南(左)はルーフバルコニーで、全面開口で連続する。


 家族皆が集まれる広いリビングは、さらにルーフバルコニーへ広がる。


 リビングには親世帯で見られたようなハイサイドライトより外光が降り注ぐ。


 ダイニングスペースはすこしバルコニーへ突き出している。


 ルーフバルコニー。親世帯と子世帯の間に生まれた都会のプライベートスペース。奥行きは約10m、幅は広いところで約5mある。
もちろん軒にはハンモック用のフックが備えられる。デッキはレッドシダーにグレーを塗ってから拭き取り、ニュートラルな色に仕上げた。

 傾斜壁には植栽の手入れ用階段が数カ所ついている。


 オープンでパブリック的な2階から、プライベートな3階へ。筆者の背後に主寝室、右側に水回り、子供室と続く。
頭上には傾斜した天井に沿って光が落ちるよう照明が設えてある。

 子供室。左側は就寝スペースで将来二部屋に分割もできる。
北側斜線による傾斜天井の下にはスタディデスクを作り付けた。高さが取れない部分に座って利用するスペースを持ってくる効率の良い設計だ。

北側のトップライトなので明るすぎず机上を照らす。足元が斜めになっているが、2階のハイサイドライトに見えた部分。

【南雪谷の家】
建築設計:河野有悟建築計画室
構造設計:Scube 
施行:山庄建設
敷地条件:準防火地域、近隣商業地域、第一種中高層住居専用地域

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18 9月, 2016

「SDレビュー2016 入選展」レポート

9月14日~9月25まで開催の「SDレビュー2016 – 第35回 建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展」に行ってきました。会場は代官山ヒルサイドテラスF棟。
[The 35th Exhibition of Winning Architectural Drawings and Models]

 SDレビューは、実現見込みのないイメージやアイデアではなく、実際に「建てる」という厳しい現実の中で設計者がひとつの明確なコンセプトを導き出す、思考の過程を、ドローイングと模型によって示そうというもの。


 1982年、槇文彦発案のもとに第1回目が開催され、以降毎年「建築・環境・インテリアのドローイングと模型」の展覧会と誌上発表を行っている。

各賞の発表は後日だが、今年の入選15作品を紹介。
 〈裏と「オモテ」と境界〉 石川翔一、神谷勇机/1-1 Architects
愛知県知立市の住宅。

 築50年の木造住宅の増改築。天井の高い平屋住宅に水平の境界を挿入し、天井裏であった箇所を天井「オモテ」と読み替え、新しい住空間を創出。


 模型の赤い部分を既存より減築し、奥の青い部分を増築し同時に耐震補強も図る。


 〈農家住宅の分筆〉 安田将之、岸 秀和/kishi, yasuda architects
愛知県一宮市の住宅。

 田園地帯に残る低密度な風景を継承しつつ更新する手法。風景の輪郭ともいえる屋根の稜線と躯体を残しながら、二家族のために分筆する。


 既存状態。


 〈擁壁と屋根/対行政住宅〉 齋藤隆太郎/DOG
神奈川県横浜市の住宅。

 市街化調整区域で様々な規制や条例が掛かる敷地。対行政という要素をポジティブに取り込み、敷地の特殊な形状や性質を利用して、ここにしかできない新しい建築の姿を生み出す。


 〈House N〉 矢野泰司、矢野雄司/矢野建築設計事務所
高知県東部の住宅。

 海を望む高台の敷地で、独自のフレーム構造を並列に連続させ、3階を持ち上げ海への眺望を獲得。その下に高さ4mの半屋外空間を生み出し、人と人を繋げる場として機能させる試み。


 〈おおきな家〉  針谷將史建築設計事務所
三重県の住宅・事務所・ギャラリー。

 写真家のためのギャラリー併用住宅。住宅街の中、1,000m2もの敷地は家と街との間にどのような関係性をもたらすのか。内外の庭と様々なスケールの空間が、複数の過ごし方を同時に許容する。


 〈大きな屋根と小さな屋根のある庭〉 小川泰輝、錦織真也/小川錦織一級建築士事務所
宮城県石巻市の住宅。

 3.11の津波で自宅を失い、5年間の借り暮らしの後防災集団移転地へ。親子二世帯が丁度並ぶ敷地を得られたことで一続きでありながら沢山の余地を残す計画で、DIYや野菜作りなどしながら新しい地での生活を創造していく。


 〈だぶるすきんの家〉 佐藤 信
大分県大分市の住宅。

 思い出のある家を改修しながら、並列で2台分の駐車場を確保するという施主の要望。


 既存の建物半分を解体し、構造部材をそのまま使いながら90度回転させた位置に再構築。”切り口“ 部分は耐震補強を兼ねた入れ子状の出窓で表情を持たせた。(出窓は端部のみ開口する)


 〈大地の家〉 畑友洋建築設計事務所
大阪府池田市の住宅

 敷地周辺の風をもつ小盆地、それに適う植生、環境に当たり前に寄り添いながら暮らすことを考え、全ての階層に於いて平面計画は大地への配置計画であり、建築全体で内外の豊かな関係性を紡ぐ。


 〈瀬戸内の海の駅舎 〉西澤高男/ビルディングランドスケープ+日髙仁/SLOWMEDIA
愛媛県弓削島。

 全国初の海の駅のための駅舎で。海と陸の結節点として、サイクルステーションや観光案内所も兼ねる。桟橋から続く様々な空間を建物のスロープが繋ぎ「全てが道端のような」小さな活動が連続する場となる。



 〈52間の縁側〉 山﨑健太郎、岡本章大/山﨑健太郎デザインワークショップ
千葉県八千代市の宅幼老所(小規模多機能型居宅介護施設)。

 デイサービスや宿泊、訪問介護センター、さらに子ども食堂、就労支援スペースとして工房、寺子屋も併設。緩やかに起伏する敷地に合わせ縁側と、雨水を活用した水辺をもつ縁の下や畑は地域、子ども、お年寄りたちの新しい営みの場となる。



 〈呼応する場所〉 木村太地、佐々木健二/SUPPOSE DESIGN OFFICE
神奈川県鎌倉市のオフィスビル。

 周囲の商店や住宅の環境文化を壊さないよう、引き違い窓という住宅の要素を取り込むことでファサードのスケールを細分化。しかし内部は街のような気積を持たせるため内外のズレによって建物は揺らぎを獲得し、古都に馴染む画一的なオフィスから脱却する。


 〈Takasaki Trekking Terrace〉 田中裕一、中本剛志/Studio YY
群馬県高崎市の集合住宅複合施設。

 高崎の良さや賑わいを還元できる事を目指す建築。下層にはテラスで結ばれるテナントとアウトドアチャペルも計画。上層には住居で居住者用のスロープから公共のスロープへ連続し、街から個の居場所へ自然に繋がることを期待。



  〈とらのこ保育園〉 山下貴成建築設計事務所
山梨県河口湖町の保育園。

高齢者施設の3棟が囲む敷地に湾曲したアーチの屋根を掛け、園庭、ラウンジ、保育室など分節しながらも一繋がりの柔らかい環境をつくり出す。保育園が皆が集まる大樹のように、コミュニティの核となるような建築を目指す。

 アーチ屋根の1/1モックアップ。


 〈富江図書館 さんごさん〉 能作淳平/ノウサク ジュンペイ アーキテクツ
長崎県五島列島福江島のゲストハウス兼図書施設

 過疎化が進むこの島の文化を次の世代に、或いは島を訪れた人に伝えることを目指し、島にある素材や建材、技術を用いてコンバーションする。また図書館がない地域なので全国から寄贈された本を集め図書スペースも計画。


 〈幼・老・食の堂〉 金野千恵/teco
東京都品川区の高齢者福祉施設(看護小規模多機能型居宅介護施設)

 介護施設と保育所を、中心にあるまちの食堂で繋ぎ、幼と老、地域の食を支える地域に開かれたお堂のような建築。ロッジアによって多様な交歓を生み、テラスや屋上菜園を開放し、地域と施設の相互的なケアが培われる事を期待。


 会場を回る槇文彦さん。


 審査委員。左から岡村仁、安田幸一、飯田善彦、乾久美子の各氏



【SDレビュー2016 – 第35回 建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展】
東京展
 会期:9月14日~9月25日
 会場:代官山ヒルサイドテラスF棟、ヒルサイドフォーラム
京都展
 会期:10月3日~10月21日
 会場:京都工芸繊維大学 美術工芸資料館

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