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24 5月, 2017

RCRアーキテクツによる「プリツカー賞受賞記念講演会」/安田講堂

5月22日、2017年プリツカー賞受賞者であるラファエル・アランダ、カルメ・ピジェム、ラモン・ヴィラルタ(RCRアーキテクツの3人が、東京大学安田講堂にて受賞記念講演を行った。


定員1000名の講演会は大変な人気で、開始10分前にもかかわらず入場待ちはご覧の行列。早くに定員に達し多くの方が入場を断念せざるを得なかった。


シンディ・プリツカーの声明。「審査団は、30年近くにわたって共同制作により作品を生み出してきた3人の建築家を選びました。アランダ、ピジェム、ヴィラルタの3氏は、共に活動することでそれぞれの領域をはるかに超えた作品を世に 送り出してきました。3氏の作品は、公的な空間や私的な空間から文化施設や教育機関まで幅広く、それぞれの施設特有の環境条件とその土地の固有性を強く関連付ける彼らの作品は、3氏の手法が真に溶け合った証しと言えます。」


会場最前列にはプリツカー賞歴代受賞者である西沢立衛、妹島和世、グレン・マーカット(審査員長)、リチャード・ロジャース、ワン・シュウが並ぶ。伊東豊雄の席も用意されていたが講演に間に合わなかった。


紹介されるリチャード・ロジャース。


ラモン・ヴィラルタ、カルメ・ピジェム、ラファエル・アランダ。[Ramon Villa, Carme Pigem, Rafael Aranda]
スペイン・カタルーニャ地方オロット出身の3人組の建築家。1988年故郷に建築設計事務所「RCRアーキテクツ」を設立して以来、共同制作によって作品を生み出してきた。


進行は東京大学教授でもある千葉学。自身も改修に携わったこの安田講堂で記念すべき講演会の開催となった。
「RCRアーキテクツは地域性を大切にしながら、世界中の共感を得られる建築を生み出す。そういった姿勢こそが今世界が求めていることではないだろうか。」


ハイアット財団エグゼクティブ・ディレクター、マーサ・ソーン[Martha Thorne]
「かれらは、繋がり、共存、その場の光、風、素材、風土を大切にし、加えて個人の経験を活かしながら素晴らしいものを作り上げる。」


3人で同時に講演を行うのは初めてだという。
「今回の来日で自分たちにぴったりの日本語を学んだ。それは
『阿吽の呼吸』と『三人寄れば文殊の知恵』です。これはわたしたちは『Shared Creativity』という言葉で表現しています。一人の力と経験では作れないものも三人で知恵をと力を出し合って30年活動してきた。」と話すように3氏の作品は、それぞれが持つ背景と語り合うような空間を創造するべく、建物 の場所および場所の持つ物語に対して徹底的なこだわりを見せている。


活動の拠点にしているスペインの田舎町オロット [Olot] の紹介。
「火山性の大地と豊かな自然に恵まれている。自然といっても農場や植栽なども多く、それは人の手が加えられた自然といえる。」


「農場の小屋。古びた金属や木材と植物が見せる表情。」


「荒々しい岩肌と植物など、これらはオロットの典型的な風景で、とてもコントラストが強い風景。こういったところで育ち、事務所を構え仕事をしている。」


「1990年初めて日本を訪れ各地を回ったが、それは今までの人生で全く異なる体験ができた機会だった。特に高野山で過ごした数日はとても大きな意味をもち、この3人で建築をやっていくのだという強い信念をもつきっかけとなった。」


「こういった砂庭は日本の方には日常的かもしれませんが、そこには小さな宇宙があり、『一体どうやって作っているのだろう!』と我々の驚きと興味が尽きることはなかった。」


「間が仕切られながら繋がる日本の建築を学んだ。」

その後も展覧会なども含め5回来日。


2010年にはTOTOギャラリー・間 25周年記念展「GLOBAL ENDS」に〈人間回帰〉という作品を出品している。なお、2018年1月には同じくギャラリー・間で個展が開催される予定。


今回の来日では奈良の吉野杉をリサーチした。


「日本建築の重要な素材である杉や桧がどのように育てられ、製材されるのか “素材のルーツ” をリサーチした。」
「ルーツを知るとそのエッセンス(本質)を理解することがでる。エッセンスを理解することで異なる文化を理解することができる。それが新たな創造の源となる。」


「奈良の寺や京都の竜安寺にも行きました。外と内の融合、間と間の連続性、これら日本の建築は我々に常にインスピレーションを与えてくれます。」

多くのスライドを使って自作の紹介がはじまる。

〈トソル-バジル競技場/Tossols-Basil Athletics Track〉
オロットの街にある競技場。ほとんど木を切らずに森を活かしながらトラックを計画した。
(photo: R.Prat)


単に競技場を作ったのではなく、走りながら森の奥行きを感じることができる場所を作った。この場でなければできない競技場。
(photo: H.Suzuki)


〈ベルロック・ワイナリー/Bell–Lloc Winery〉
ワイン畑の風景に溶け込むように計画された貯蔵施設。
(photo: H.Suzuki)


ワインのテイスティングのために光や風などその土地の空気を感じられる。日常的な水平垂直の空間を避け、特別なワインの世界に入ることができる。
(photo: E.Pons)


〈ラ・リラ劇場の公開空地/La Lira theatre public domain〉
川の畔に建つ、使われなくなった劇場を広場へとコンバージョンした。
(photo: H.Suzuki)


片側には森と川、反対側には街。それらを繋ぐ力強い空間を作った。多目的ホールを地下に設けた。
(photo: H.Suzuki)


〈レス・コルズ・レストランのマーキー/Marquee for Les Cols Restaurant〉
マーキーとはテント小屋。フランスでは古来より人が集まり宴を催す際、仮設のテントを設けた。それはとてもはかないものだがその下では人々の賑わいがある。そんなレストランを求められた。
(photo: H.Suzuki)


敷地を掘り下げ両側に石を積み上げる。その間に幾本ものチューブがしなりながら屋根を形作る。周囲は透明なシート材が覆い(ガラスでは強すぎる)、テーブルや椅子も透明で、外なのか内なのか非常に曖昧な空間を作った。外にも内にも今後植物が育っていくことでその曖昧さはさらに増していくことになる。
(photo: H.Suzuki)


〈ヴァールゼクローク・メディアテーク/Waalse Krook Mediacheque〉
ベルギーで竣工した最新プロジェクト。都市のなかで大きなボリュームが重くならないように調和を意識した。場の雰囲気、ここを使う人々がどのような感情になるかを深く考えた。
(photo: Courtesy of the authors)


「建築をつくるにはその根本がどこにあるのかを常に考えています。その場所の文化やルーツを理解することで設計のロジックとなります。それを表現できれば建築には共有できる要素が必ず生まれるはずです。」「建築は生きていくための仕事であると同時に、我々の生き方でもあります。」と締めくくった。


講演会の2日前、東京の迎賓館赤坂離宮で行われたプリツカー賞授賞式。左から西沢立衛、安藤忠雄、妹島和世、ラファエル・アランダ、グレン・マーカット、カルメ・ピジェム、ラモン・ヴィラルタ、伊東豊雄、坂茂ら日本の歴代受賞者と共に。 



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07 5月, 2017

成瀬・猪熊建築設計による外装デザイン「キュープラザ二子玉川」

成瀬・猪熊建築設計事務所が外装デザインを手掛けた世田谷区の商業施設「キュープラザ二子玉川」の内覧会に行ってきました。(4月28日開業)
「キュープラザ二子玉川」は東急不動産が原宿、恵比寿、心斎橋で展開している都市型商業施設「キュープラザ」ブランドの4店舗目。基本設計は東急設計コンサルタント、実施設計・施工は奥村組が担当した。


敷地面積1,158m2、延床面積2,521m2。S造+一部RC造、地下1階、地上3階建。
駅周辺には大型施設が林立する一方で、自然に囲まれた街並みが愛されている二子玉川に於いて、既存の環境との調和を図り、なじみ愛される施設を目指した。一店舗当たりの面積を広く、テラスやドライエリアを設け、自然を取り入れながら賑わいや開放感を演出。


外装デザインは3社の指名コンペだったそうで、成瀬・猪熊からは「かつてこの場所にあった玉川電気鉄道の風景をモチーフに、枕木・線路・駅をイメージした外装で懐かしさや親しみを味わえる外観。」を提案した。


レールと枕木をモチーフに使ったファサード。この東面は田園都市線や大井町線からも望め、敷地は商業地と住宅地の境に位置している。レール型の鋼材でフレームを組んだうえで、所々枕木(ケンパス材)をはめ込み、建物の表情を強く見せながらも全て覆うことはせず、店舗の賑わいを街に対して開いた。
“レール型の鋼材”とあるのは、実物のレールでは強度的に建材として使えないので、レール型断面の鋼材を製作して使用しているのだ。


外構は公開空地を取りながら、植栽による緑の還元とベンチによって居場所をつくった。
枕木の壁は落下防止の手立てを何重にも施し、万が一外れてもワイヤーによって保持される。また開口部には照明が仕込んであり、日が沈むとその表情を変える。照明デザインは成瀬・猪熊建築設計事務所と協働し、シリウスライティングオフィスが照明コンサルタントを担当した。


プロジェクトの途中から参画した外装デザインであるが、建築家として何が出来るかを考え、街と店舗の結節点として注力したという共用部。


回遊しながら建築的な体験をしてもらえるようデザインした。
2階の共用部は、しっかりと目地を通した天井パネル、ヘアライン仕上げのエレベーター扉、白木調のデッキ、ジョリパット仕上げの柱、、、


そして桧無垢材のベンチ等、素材感のある仕上げで、ゆったりとした広さをもつテラスが間延びしないようにした。


ベンチの傍らには大きなプランターを設えた。直射日光があまり当たらないので森の下草をイメージした植栽。


3階への階段に回り込むとダイナミックな架構が現れた。単なるファサードデザインに留まらない、まさに建築的な表現が見られる。


枕木パネルの位置は多くのスタディを重ねた。店の賑わいを見せながらファサードとして主張しつつ、店内からは向かいの集合住宅を隠し、外からはエレベーターの機械部を覆うなどの機能を持つ。


続いて地下へ。
セットバックさせた建物の足元には広いドライエリア。


ドライエリアはテナントと折り合いをつけながらデザインした。1階に渡り廊下が二つあり、光の入る箇所、入らない箇所により空間が縦方向に分節されるイメージであるため、枕木を用いて水平のラインを強調し、大きなプール状の空間に演出。


壁に沿って枕木のベンチシートが連続する居場所。このベンチ側では壁面を少しふかすことで、ドライエリアの平坦な輪郭に凹凸を持たせ地形のようにデザインした。


多機能トイレ。意外にないのが荷物を架けるフック。オリジナルデザインのものを設えた。


サインも。

テナントを紹介

地下1階〈Asian Bistro Dai(アジアンビストロ ダイ)〉


地下1階 〈Climbing Gym Fish and Bird(クライミングジム フィッシュアンドバード)〉


高さ4m、全長20m近いものを含め3種類のクライミングウォールが楽しめる。


1・2階には〈mont-bell(モンベル)〉。1000m2以上、都内屈指の大型店舗。
正面外構には枕木と川石で線路や多摩川をイメージ。


3階にはレストラン〈CHICAMA(チカマ)〉。ナポリから取り寄せた日本最大級のピザ釜がある。


本場のピザ、パスタ、魚介を使ったチリの郷土料理セビーチェ、スペインのタパスやパエリヤなど。


右から成瀬友梨さん、猪熊純さん、担当の大川周平さん。
「私たちの提案は、『外装材を提案する』というコンペ要項を意図的にはずし、フレームを飛び出させ、外階段をファサードの内部に取り込みました。それにより単なる装飾としてのファサードではなく、そこを取り巻きながら登っていく街路の続きとしてのファサード空間を実現し、かつ歩きながら街とその歴史に触れることができることとしました。」

【キュープラザ二子玉川】
事業主:東急不動産、東急不動産マネージメント
基本設計・監修:東急設計コンサルタント
実施設計・施工:奥村組
商環境デザイン:成瀬・猪熊建設設計事務所
詳細:www.q-plaza.jp/futakotamagawa

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